働き方改革に取り組んでいる企業は多くありますが、ただ表面的な目標を決めるだけにとどまっている企業も少なくありません。
この記事では、働き方改革で会社全体の業績が上がり、チームの人材強化や経営課題の解決につなげるための取り組み方を、ルービックキューブを使って解説します。
どのように考えていくかが、イメージしやすくなりますので、ぜひご覧ください。
この記事のポイント
- 働き方改革の取り組みが、業績アップや経営に繋げられない理由
- 経営戦略的に働き方改革を行うための業績の方程式
- ルービックキューブで例える、生産性の上がる現場の作り方
働き方改革と代表的な3つの経営課題
一般社団法人日本能率協会による、第40回当面する企業経営課題に関する調査「日本企業の経営課題2019」によれば、経営課題の上位3つは、「収益性の向上」「人材の強化」「売り上げ・シェア拡大」となっています。
引用:
https://jma-news.com/wp-content/uploads/2019/10/20221608cb407dda0467bd6d4d980720.pdf
詳細は割愛しますが、この3項目は中堅企業でも中小企業でも同じです。
働き方改革の実態と経営課題の矛盾
収益性≒生産性ととらえても問題ないでしょうから、「生産性の向上」が目的である「働き方改革」は経営課題を解決する手段としてはまさにもってこいの施策になるはずです。
https://soshikidukuri-kenkyujo.com/column/24/
しかし現実には、働き方改革は働き方改革関連法を遵守するコンプライアンス目的が第一になり、本質的な経営戦略としてとらえていないケースが多いように思います。
取組み内容としても残業削減や業務効率化、標準化といったことに主眼が置かれ、その結果、実際に効果が感じられたのは10%程度(部分的にも含めれば50%程度)というデータが出ています。
引用:
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20200205.html#
社員があまり効果を感じていない働き方改革の現場では、取組みに対する疑問や不満、決められたルールを守らないというようなことが横行し、組織風土も悪くなり、社員が退職する事態にもつながります。
会社としての魅力もアピールできず採用につながらない、採用できても良くない風土に嫌気がさしてやめてしまうなど、負のスパイラルにはまっている会社は多いです。
これでは経営課題の一つ「人材の強化」も解決しません。だからこそ働き方改革は経営戦略的にやらないといけないのです。
業績を上げる方程式
会社として業績をあげるには、戦略だけではダメです。それを実行することで始めて成果が出ます。
業績=戦略×実行
これが原理原則です。
会社としては経営計画を立てているところも多いと思いますが、実行についてはどうでしょうか?
実行するのは「人」です。そして、その人に付随する強みやスキルがリソースになります。一人では仕事は成立しませんから、人と人の間(関係)も大切です。そこに風土が生まれます。
今挙げた人やスキル、風土を整えることが実行に必要なことであり、それが働き方改革の目的です。そのことを踏まえて、なぜ働き方改革を行うのかを社員に示しましょう。
働き方改革は、効率化や標準化によって生まれた時間を、本来取り組むべき仕事に充てることを考えます。なぜ働き方改革を行うのかを明確にすることによって、本来取り組むべき仕事、習熟すべきスキル、育成すべき社員が明確になるので、効果的な時間の使い方ができるようになります。
ビジョンとルービックキューブの意外な関係
これが示されたら、次は現場で何をやるかを考えます。
しかし、これがうまくいきません。
押し付けあったり、自分の意見だけを主張しつづけたり、意見を言わなかったり、そのうち声の大きい人だけでまとめてしまっておしまいとなります。
その結果、決めたことに従わない、文句だけ言うというような状況になってしまうかもしれません。
その理由はこれです。
ルービックキューブで説明します。
それぞれの社員は目の前にある面しか見えていないので、自分に見えている面を最適化しようとします。
例えばAさんが赤い面を揃えようとしたときに、黄色い面を揃えていたBさんが「そんなことされると困る!」と抵抗する、ということが起こります。どちらも良かれと思って仕事をしているのに、これでは進むものも進みません。
このように人と組織の問題はルービックキューブのように相互に関係しあう複雑な問題です。
では、どうやって解決するのか。それは自分の面しか知らない人たちに6面あることを教え、6面揃っている状態を目指すことを理解してもらうことです。
ここで大事なことは、6面揃った状態を全員が納得、共感しているということです。
それがなければ自分の面が崩れてまで6面揃えることに協働することはありません。
従って、現場でまずやるべきことは、メンバー全員で6面揃った状態=そのチームの働き方の目的やビジョン を決めることです。
ビジョンとはメンバーがどのように働いているのかという状態を映像で全員が共有できるものです。
制度や目的だけでは共感は得られないので、ここを丁寧に決めていくことが大切です。
働き方改革はビジョンにコミットした人や組織を生み出す
当然、これまで話したことがないようなことを話し合いますので、衝突もあるでしょう。
こちらのコラムで紹介したタックマンモデルの谷に向かっていく状態です。
このときに大事なのは、全員がお互いに尊重し、しっかり意見を聴くということです。そういうことを繰り返していくことで谷を越え、成果が生まれ、チームとして成長します。
働き方改革を通じてチームが成長するということが、まさに会社として成長するということで、人材の強化につながり、業績向上につながります。これが働き方改革が経営戦略の一つであると主張する理由であり、経営課題の解決に直結するのです。
●「見える化」に潜む落とし穴にも注意する
ちなみに業務効率化の一環として、見える化して無駄を削減する、ということをよくやります。
これはこれで有効なところもあるのですが、実は先ほど示したルービックキューブの問題は目に見えないことが多く、無駄が表面化しないこともよくあるのです。
自分たちでチームのビジョンを決めることで、そこにコミットした活動が生まれ、自身の持つ力をチームのために発揮しようということになり、結果、やりがいやエンゲージメントが向上し、さらに自分の力を発揮しようという正のスパイラルが生じます。
社員一人ひとりが自分の持てる力を最大限発揮する、発揮できる環境を整える、障害を取り除く。
これこそが本当の意味で最も生産性が高いチームなのではないかと私たちは考えています。
この記事のまとめ
- 働き方改革は経営戦略的に取り組み、経営課題も同時に解決する
- チームの働き方の目標やビジョン決めて共感することが重要る
- 働き方改革は、チーム全員がお互いを尊重し意見を聞きあう意識が大切
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