あなたは働き方改革をどのようなものだと考えていますか?
残業削減、業務改善といった「短い時間で働くこと、そのための日々の改善」を働き方改革と考えている方が多いように感じます。そして、数々の組織の現場やこれから取り組みをしようと考えている方々の様子を見ていて、どうも楽しそうではない、むしろ閉塞感さえ感じることに私たちは違和感を持っています。
そうなのです。働き方改革とは、本来楽しく、ワクワクすることなのです。
なぜなら働き方改革は自社の“こういう会社でありたい”を実現するためのものだからです。
この記事では表面的な解決方法ではなく、本来の働き方改革を成功させるために必要な考え方や、実際の失敗例を見ながら、どのように取り組んでいくのか解説をします。
この記事のポイント
- 働き方改革とは、表面的に働く時間を減らすことではない
- 残業削減や時短勤務に取り組みで失敗してしまう本当の理由
- 楽しくワクワクする働き方改革に取り組むために必要な考え方
ふるまい方を変えて新しい価値を生み出す
言葉の定義をお伝えするとすれば、私たちが考える働き方改革は「ふるまい方を変えて、新しい価値を生み出すこと」です。
働くとは「ふるまい」であり人の役に立つこと、改革とはこれまでのやり方を否定して、全く新しいものにすることだと私たちは定義しています。
当然、今のやり方を否定して取り組むことには、様々な乗り越えるべき事柄や、取り組みの中での一定の負荷やチャレンジの中でのもがき、といったことが含まれるでしょう。それは時に楽しいとは言えないものだということも理解しています。それでも思い描くビジョンに向かって進んでいる時というのは、楽しくワクワクします。
つまり、もし今あなたが働き方改革にできるものなら取り組みたいが難しいと感じていたり、ワクワクするものだと感じられないとすれば、それは働く時間を削減することと売り上げを上げることはトレードオフであると考えているからでしょう。
できるならば、社員に残業はさせたくない。
でも、残業しなければ今の売り上げを保つことはできない。そうなってしまったら、それはとても楽しい気持ちで取り組めるものではありません。
「残業削減」「時短」の取り組みが失敗する理由
そもそもなぜ、働き方改革と聞いて残業削減が真っ先に思い浮かぶ人が多いのでしょうか。
長時間労働の是正は日本が抱える最大の問題である労働人口の減少、すなわち人手不足に対する最重要課題であり、その具体的な取り組みとして働き方改革法案で残業時間の上限規制が設けられたからに他なりません。
そのため法令順守を目的に、残業削減に取り組む企業が増えています。
しかしそれは働き方改革の本質ではありません。
もちろん、本来の目的である業績の向上のためには今よりも短い時間で成果を出すことが求められるでしょう。しかし私たちからすれば、残業削減や時短は取り組みの結果としてもたらされるものであり、最初からそれを目的にはしていないのです。
既にお気づきかと思いますが、実は残業削減や時短だけを目的にした働き方改革はうまくいきません。
例えば、法律を守るために残業削減をするぞ!と経営者が考えたとします。すると、残業を減らす=早く帰るようにする、という課題が設定され、早く帰ることを強制する取り組みが行われます。
いわゆるノー残業DAYや全社19時退社といった全社一斉施策です。
その時に現場から聞こえてくるのは「仕事をしなくていいなら早く帰るけど・・・持ち帰り仕事が多くなるだけだよ」「結局管理職の自分が仕事を引き受けることになり、帰れない」といった不満や不安の声です。
まさに上述した、時間と成果はトレードオフである、という考え方です。
つまり、早く帰るということは今の仕事をしなくていいことですよね?というこれまでの習慣を前提にした考え方にとらわれているということです。
働き方改革を再定義する
ここで改めて「働き方改革とはなんであるか?」に立ち返りましょう。
働き方改革とはふるまい方を変えて、全く新しいものを生み出すことです。ここでいう「ふるまい方を変える」の中には投入時間を減らすということも含まれるのですが、それだけではないということです。
本当に投入時間が減る新しいやり方になればいいのですが、現実はただ会社にいる時間が減っているだけ、つまり表面的な投入時間が減っているようにみえるというだけで、実際の投入時間は減っていないということが起こっているのです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
実例1:営業時間外の電話問い合わせの改善
ある会社で残業時間を減らすための取り組みとして、営業時間外の電話応対を留守番電話にしようというアイデアがでました。
営業時間外の対応を減らせば残業時間は必然的に減るだろうという仮説です。ですがこの決定までにかなりの時間を要しました。なぜかと言えば、営業部からの猛反対があったからです。
その原因は機会損失でした。お客様からの電話に対応できなかったら他の会社に問い合わせが行くかもしれない、というのです。
確かにそうかもしれません。しかし、それが事実だとすればその解決策は「営業時間外も問い合わせ対応をすること」ではなく、「営業時間内に問い合わせが来るようにすること」です。
つまり、自社の魅力によって他社に問い合わせしない、あるいは他社に問い合わせしたとしても、最終的に自社に依頼が来るようにすればよいのです。それを時間のせいにしているだけであり、そのまま行くとどんな時間でも対応できることでしか勝ち残れないという状況になってしまいます。
確かに、今は時間でカバーしているかもしれません。ですが、この会社のようにどこかで「対応時間やスピードを武器に勝負する」という戦略を変えなければ、もはや勝ち残ることは難しい時代になっています。
ですから、目の前の問題にとらわれることなく、どうしたら理想の状態に近づけるかを考えることが必要なのです。
その時間を持つことこそが「働き方改革」であり、その時間を持つために、これまでのやり方を否定して新しいやり方を行うことから始めれば良いのです。
うまくいく働き方改革とは
先にも述べたように、働き方改革は、自社の”こういう会社でありたい”を実現するためのものです。その想いを持って取り組みを進める企業は、必ず成功します。そこで考えていただきたいのが、なぜ働き方改革の取り組むのかということです。
業績の向上はもちろんのこと、社員一人ひとりを大切にしたいという思いもあるでしょう。自社の利益はもちろん、パートナー企業の利益があがることもあるでしょう。
その上で、それらを実現するための目標をチームごとに決めます。その目標に向かってチームで現状を見える化し、チームでどうしていくかを議論します。そういったことを社長だけでなく、社員を巻き込んで考えてみることが重要です。
人と人は違います。
自分はこう思っている、こう考えているということを言える場を作り、その集合知でチームが目指す目標を決めます。
表面的な問題解決ではなく、何のためにやるのか?の目的を改めて整理することがうまくいく働き方改革の第一歩です。
さあ、残業時間の削減にとらわれずに、どのような会社をめざすのか、からの逆算で思い描いた未来に向かって、こうだったらいいのにな、を一つ一つ実現していきましょう。
私たちはそんな真の働き方改革を進めたい経営者を応援します。
この記事のまとめ
- 働き方改革は「こういう会社でありたい」という想いを持って取り組む
- 理想に近づくため、古いやり方に固執せず新しい方法を試すことが大切
- 表面的な解決方法ではなく、目的を整理しチームで目標を持つことが重要
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