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2021.06.17

男性育休を導入してみたら、実はメリットだらけだった!

キャリアとエンゲージメント

最近、「男性の育児休業」という言葉を耳にすることが多くなっています。

令和2年に小泉進次郎環境大臣の2週間育児休業取得がニュースになり、歓迎する意見、良く思わない意見など賛否両論でした。

この記事では、まだまだ世間に浸透していない「男性の育児休業」を実際に取り入れたことで、社内の業務全体の見直しに繋がり、働き方改革が大きく進んだ事例をご紹介します。

この記事のポイント

  • 男性の育児休業の実態と男性社員の本音
  • 男性の育児休業の制度を取り入れた成功事例
  • 制度の導入からわかる、働き方改革の推進に重要なこと

育休は取りたいれど現実には取りにくい、というのが男性社員の本音

若い世代にとっては、男性でもパートナーと一緒に育児をすることは常識になっているようです。

2017年の公益財団法人日本生産性本部の入社半年後の新入社員を対象に行ったアンケート結果によると、「子どもが生まれた時には育児休暇を取得したい」という問いに、男性新入社員の8割近くが「そう思う」と回答しています。これは、同質問を開始した2011年から過去最高の数値とのこと。

出典:2017年度 新入社員 秋の意識調査(日本生産性本部)

また、エン・ジャパン株式会社が2019年に35歳以上のユーザーに行ったアンケート結果では、男性の86%が育休を取得したいと回答しています。

出典:ミドル2500人に聞く「男性育休」実態調査
―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―(エンジャパン)

一方、男性社員の取得したいという気持ちはあるものの、会社の環境により取得しにくいというアンケート調査の結果があります。

育児休業制度を利用しなかった理由のトップ3は「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」「会社で育児休業制度が整備されていなかった」「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」というものです。

(「平成 29 年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」による。)

出典:平成 29 年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書
労働者アンケート調査結果(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

今の調子で働き方改革が進めば、若い優秀な人は、多様な働き方を推進する会社を選ぶようになります。

「男性社員が育休を取るなんて・・・」と昔の意識を持つ人が多い会社や休みがとれる働き方に変えない会社のままでは、労働力不足の日本で人材確保は難しくなっていくのではないでしょうか。

私は男性育休の推進は、働き方改革を進められる良い機会の一つになると考えています。
2~3日の短い休暇でなく長い休業をとることでどうやったらいいのか?と職場全体で働き方を見直さざるを得なくなるからです。特に男性社員の比率が高い会社にはチャンスです。

社長が率先して男性育休を導入したら、働き方改革が進んだ、という事例

男性産休・育休取得が「働き方改革」を進めたという事例についてご紹介します。

京都府南部にある機械部品の試作品を製作する40名ほどの会社。ほぼ男性社員で女性は数名です。社長には娘さんが3人いて、ちょうど皆の結婚、出産が続きました。里帰り出産などで社長自身娘さんの子育てを手伝う経験をしたり、育児の大変さを目の当たりにし、娘さんのパートナーにも積極的に育児に関わってほしいと思ったそうです。

そのような経験から、自分の会社の男性社員にもぜひ育児休業をとり一緒に子育てをしてもらいたいと、先ず社員に男性の育児参画の意識付け研修をしました。重いベストを着て妊娠中の体の重さを体感したり、赤ちゃん人形を使ってお風呂に入れる実習、妊娠や出産後の女性の心身の状態などの講義、家事分担ワークといった内容です。

合わせて男性社員も育児介護休業法で育休が取得可能など制度の周知をして、会社として応援することを宣言しました。トップからの強いメッセージ発信と社員の意識醸成をしたのです。

数か月後、男性社員Aさんが、1か月育児休業を取得することになりました。1か月なので代替要員を雇うのでなく、今いる人員でAさんの仕事をフォローすることになり、課内で話し合い、育休に入る前に以下のことに取り組みました。

  • Aさんの担当業務洗い出し
  • 課内スキルマップ作成
  • 育成計画作成とトレーニング
  • Aさんが手順書やマニュアルを作成し引継ぐ

これらをすることで業務体制の見直しが進み、Aさん復帰後は、業務量の偏りが減り、育児休業取得前に比べてAさんの残業時間が減りました。

また育休中、Aさんが担当していたプログラミングを後輩がやり、実務経験を積むことができ後輩のスキルが上がりました。普段は、機械に限りがあり経験できなかったとのこと。

その課のマネージャーやメンバーの感想です。

育児休業を取るのはいいことだから応援したいと思った。


スキルマップ作成や多能工化はやるべきと思っていたが後回しになっていた。育児休業がきっかけになり、良かった。年次の浅いメンバーも主体的に仕事に取り組む姿勢が出て、以前より皆で助け合おうという気持ちが高まった。


1名減り、しかもAさんしかできないことがあったからどうしようか・・・と思ったが、学んで、業務としてやることで、できるようになってきた。経験値が増え、成長の機会になった。引き続き皆が休めるように仕事を覚えたい。


チームメンバー間の声掛けやお互いの様子を見て、先回りして自分ができることをするなどカバーしあえるようにもなった。

この会社のように、育児休業取得を推進することは、社員のためだけでなく、業務見直しの機会になりムダ削減や仕事に効率的に取り組む意識を持つ社員が増え、残業時間が減る、スキルアップの機会になり会社全体の能力がアップするなど、会社にとってもたくさんのメリットがあるのです。


会社にとって制度をうまく取り入れるメリットは大きい

2021年、男性に育児休業の取得を促すための育児・介護休業法の改正案の成立、2022年度に実施、という見込みになりました。子の出生後8週間以内に休みを取りやすくする「男性版産休(出生時育児休業)」の創設がされることになります。来年は、取り組まなければいけなくなります。

これをチャンスと捉えて、社員と一緒に仕事と自分の大切なものを両立させるためにどうしたらいいのか?

話し合い、それが実現できるように働き方改革を進めましょう。

この記事のまとめ

  • 男性の育児休業を通して、業務の見直しや後輩の育成につながった
  • 働き方改革が進めば、誰もが働きやすい職場つくりに繋がり全体の利益になる
  • 2022年の法改正と制度の創設に備えて、いまから準備をすることが大切
小松 麻利子

小松 麻利子

特定社会保険労務士、アンガーマネジメントコンサルタント

担当地域:近畿を中心に全国

中小企業・自治体職員の働き方改革やハラスメント防止対策を中心にコンサルティングを実施。社員一人一人が強みを活かしてやりがいを持って働けるよう丁寧な支援をしています。