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COLUMNコラム

2021.12.14

管理職のパワハラ予防に一番有効な部下指導のスキルとは?

ハラスメント

ハラスメントについてニュースを聞かない日はないように思います。

会社がとるべき施策として、2022年4月から中小企業にも適用される改正労働施策総合推進法で義務付けられる防止措置だけしていたらハラスメントはおきなくなるのでしょうか?

それだけでは無理だろうと感じている人は多いのではないでしょうか。

パワハラ、モラハラ、マタハラなど…例を上げればキリがありません。
この記事では、このような部下がいたらどのように上司は対処すればいいのか実例とともに、どのような対策を取ればよいのか解説します。

部下のマネジメントに悩む管理職

経営者や管理職からは時々こんなことを聞きます。

管理職

昔は、上司から結構キツイこと言われたけど、それを跳ね返す気持ちで頑張ったよ。怒鳴られたこともあったな。でもパワハラという言葉もなかったし・・・。上司は厳しいだけじゃなく、飲みに連れていってくれて色々教えてくれたなあ・・・。

管理職

「今の時代は部下指導、難しいな~。ちょっときついこと言うとパワハラって言われそうだし・・・若い人や家庭がある人は飲みにも誘いにくいんだよな~。

多様性? 価値観の違い? そんなこと言われてもどうしたらいいんだろう?」

今、マネジメントを担当している管理職など40代以上の方々が指導を受けていた頃は、まだまだ「指示・命令型のマネジメント」が主流で、正しいやり方や考え方は一つでした。
モノを作れば売れる時代、会社が利益を出していくためには「言われたことをきちんとこなす」人材が必要とされていたのです。

しかし、時代は変わっており、市場のニーズが多様化し変化も速くなっています。このような時代には自律的で自主性を発揮できる人材が必要です。働く場でも一人ひとりの価値観や個性を尊重することが求められています。

求める人材像が変わっているにも関わらず、従来の指示命令型・画一的に部下をマネジメントしている管理職もまだまだ見られるように思います。

部下の話をよく聞かないで一方的に接していたら、部下によっては、自分の価値観を否定されたと感じてハラスメントを受けたと思うかもしれません。上司と部下が互いに歩み寄ろうとせずにあまりにも嚙み合わないままでいると、お互いに苛立ちが募り感情的になってしまうかもしれません。

昔ながらの部下指導で起こりうるハラスメントとその対策

上司が部下の個性を見ない、背景を知ろうとしないでいると、ハラスメントまではいかないものの、いずれハラスメントを引き起こす種となってしまうことはあるのではないでしょうか。

以下、いくつか事例をあげてみます。
こういう場合、上司のマネジメントはどうすればいいのでしょうか?

1.女性社員のAさん

自宅でテレワークをしている時に、上司から「~を担当して」と仕事を割り当てられたが、その後の進捗状況などの確認が一切ありません。出社していれば上司の様子を見て比較的気軽に聞けますが、テレワークだと上司の都合のいいタイミングがわからないので、聞くことができずに困っています。朝礼や定期的なミーティングもない部署なので、ずっと放っておかれるのはどういうことかともやもやしています。

このケースの場合、もしAさんが仕上げたものに間違いがあったら、上司はこう思って腹を立てるかもしれません。

「途中で確認しないで仕事を勝手に進めるから、こんな間違いをおかすんだ。
自分から確認しないでどうするんだ・・・。
いったい何年仕事をしているんだ」

上司にしてみたら、自分が若いときは自分から確認していたので、聞きたいことは自分から聞くのが当然だと思ってしまうのも仕方がないかもしれません。

でもちょっとAさんの立場で考えることができていたらどうだったでしょう?

「Aさんはもともと自分から言うタイプではないし、テレワークを導入したばかりで困っていることがあるかもしれない。ちょっとこちらから確認してみるか」

このように部下の仕事がしやすくなるよう丁寧に接したら、Aさんの不安も解消され、出てくる結果も違いますよね。

2.入社2年目のBさん

上司から期限を指定され依頼された資料を作成したところ、「こういうものではなくてもっと違うものを求めていた。やり直して」と言われました。

依頼の段階ではざっくりした説明があっただけだったので、「完成してからダメ出しするのではなく、上司が予めイメージを共有して、途中でもチェックがあれば、やり直しの時間が短縮できたのに・・・」と、もやもやっとした思いが残りました。

このケースの場合、入社2年目ならまだ自分から上司に対して「どういうイメージの資料が必要でしょうか? アウトラインを作成したら一旦見て貰えますか?」と聞いてこれないかもしれません。

「頼んだこともまともにできない・・・」と思う前に、依頼した時に「こんなイメージで、根拠のデータはこれを使って・・・。まずはアウトラインを4日以内に持ってきてくれないか」と上司がBさんにポイントを伝え、アウトラインができた時にもう一度すり合わせをしておけば、Bさんも期限内に質の高いアウトプットをすることができます。

次からは手順を学習して、自分からいろいろと確認してくるかもしれません。

3.入社5年目の男性社員Cさん。

Cさんは、共働きの妻と子どものお迎えなどを分担しています。

ある日、上司から「急ぎの仕事のため残業をして対応してくれないか」と言われましたが、その日は自分がお迎えの当番だったため、理由を言って断りました。その後、自分にそういう依頼がないのは自分は、「戦力外」と期待をされなくなったのかな・・・、と不安に思いはじめています。

この場合、日頃から部下のライフ面を知るコミュニケーションをしていれば、予めCさんが残業対応が可能なスケジュールを知ることもできます。何も知らないと「Cさんは家庭優先だから依頼できない」と思い込み、今回のようにCさんに対して無意識にネガティブなメッセージを送ってしまうかもしれません。

会社の従業員の方々を思い浮かべてください。

年齢、出身地、今までに経験してきたこと、大事にしたいこと・・・一人づつ違います。
また、人はそれぞれに強み・弱みがありますし、満たしたい欲求も違います。それらを前提に丁寧に一人ひとりに対してマネジメントすることが求められています。

ハラスメントを予防に管理職への(1on1)ワンオンワントレーニングに導入を!

では、会社としては、何に取り組んだらいいのでしょうか?

「時代が変わっているのはわかっているから、ハラスメントにならないやり方、自律型の人材を育成する研修会やコーチングなど管理職研修をしているんだ」と感じた人もいると思います。

当然そのような研修はやるべきです。していないなら、今の時代に合わせたマネジメントができるようにまずは知識ややり方を伝えるべきです。

それに加えて管理職のトレーニングにもっと手間や時間をかけるべきだと思っています。
なぜなら、過去に身につけていた考え方・やり方はそう簡単には変えられないからです。

また、人が何かができるようになるまでにはある程度の時間がかかります。新しいやり方や知識を知っただけではダメなんです。「できる」まではいくつもの段階があり、一度や二度研修したからといって一足飛びに身に付けられるわけではありません。

普段の仕事が忙しい管理職で、自らいろいろ試しながら身につけていける方はそんなに多くないのではないでしょうか。管理職全員が身につけるまで会社が手をかけて、全員ができているようにならないと、ハラスメントの種はなくなりません。

●オススメのスキル「1on1(ワンオンワン)」

管理職が身につけることとして、私が勧める一つは、「1on1(ワンオンワン)」です。


これは、上司と部下の定期的な1対1の面談です。

部下の目標達成を支援する中で、コーチングのスキルが養われていきます。部下の困りごとを支援しながら上司自身の部下指導の実践をする場になります。回数を重ねることで互いの信頼関係を築くこともできます。

目標達成のため、MBO(Management By Objectives:目標管理制度)やOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)を取り入れている会社は多いでしょう。それらの効果を高めることも同時にできます。

私が管理職コーチングをしている会社では、管理職に部下と定期面談をするようにアドバイスしています。

部門の目標を達成するため、部下の進捗状況の把握や目標とやっている仕事にずれがないか、そして困りごとはないかなどを聴く時間を定期的に持つことで、色々なことが見通せるようになってきたという感想を聞きます。部下を理解しやすくなり、その人に合わせて仕事の割り当てをしたり教えたりするようになったとも聞きます。

管理職に「部下指導のスキルができるようになるまでの仕組み」をつくってみられてはいかがでしょうか。

小松 麻利子

小松 麻利子

特定社会保険労務士、アンガーマネジメントコンサルタント

担当地域:近畿を中心に全国

中小企業・自治体職員の働き方改革やハラスメント防止対策を中心にコンサルティングを実施。社員一人一人が強みを活かしてやりがいを持って働けるよう丁寧な支援をしています。