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COLUMNコラム

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2021.04.05

パワハラはなくせる!

ハラスメント

中小企業の人事担当の方、経営者の方、2022年4月施行のハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法)への対応は進んでいますか?

職場におけるパワハラやセクハラ、マタハラを防止するために、厚生労働大臣の指針に事業主が講ずべき措置として、具体的にやらなければならない取組みが決まっています。

この記事では、実際にパワハラが起きてしまった会社の実例と合わせて、なぜパワハラが起きてしまうのか、再発を防ぐために経営者が取り組むことはなにか、について解説します。

この記事のポイント

  • 新事業の立ち上げ時にパワハラが起きてしまった実例
  • 制度や研修を行うだけではパワハラの再発防止につながらない理由
  • パワハラが起きない環境にするために〇〇診断を活用する

この記事で紹介した以外にも、どんなことをやらなければならないかは、厚生労働省がリーフレットを作成しています。こちらも参考にしてください。

参照:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

新事業立ち上げ時にパワハラが起こってしまった

昨年、ある会社でこんなことがありました。

その会社は、外国人観光客向けに特化した小売業で順調に利益を上げていたのですが、コロナ禍で大打撃を受けて休業中でした。
何とか違う事業で社員の雇用を守ろうと、社長をはじめ皆で、異業種である持ち帰り飲食の事業を構築している最中に「ハラスメント」がおきたのです。

どんなハラスメントかというと「仕事ができる人」や「どんどん動ける人」が「覚えるのに時間がかかる人」や「新しいことに慣れなくてミスをする人」の悪口を言ったり邪険に扱うなどしていじめた、というものでした。

加害者に直接伝えるより全体研修で啓発して欲しい、という被害者からの要望や法の施行時期も迫って来ていることもあり、これを機にまずは法律通りの義務を果たせるように、ハラスメント防止研修や就業規則の見直し、相談の体制づくりをしていくことにしたそうです。

私は、この話を聞いて、とても気になったことがありました。
そして、研修や法律対応をするだけでは、再びハラスメントがおきるのではないか?と感じたのです。

制度を整え研修をしてもパワハラが再発する理由

なぜそう感じたのか?というと、

今回の出来事は、新事業の立ち上げでどんどんできる人が、仕事に時間がかかったり、新しいことに慣れなくてミスをする人をいじめた、ということでした。

では、こういういわゆる仕事ができる、目立つ人は、どんな仕事でもバンバンできるのでしょうか?
苦手なことは何もないのでしょうか?

逆に、なかなか新しいことにすぐに慣れることができずにミスの多い人は、どんな仕事もうまくできないのでしょうか?得意なことはないのでしょうか?

そんなことはないですよね。
自分のことを考えても、得意なこともあれば、苦手なこともあります。

新事業を立ち上げ、軌道に乗せていくまでには多くの過程があり、そのステージに応じていろいろなタイプの人が必要なのです。

新事業を立ち上げる際には、新しいことに挑戦することが好きで、どんどんアイデアが出て、まずはやってみるという行動が容易に出来るという強みを持った人や、事実を重視しながら論理的に物事を進めていける人が活躍します。

アイデアを出すことが苦手で、決まったことを手順通りにコツコツと真面目に取り組むことが得意な人にとっては、活躍の余地は少ないのです。本人はさぼっているわけではなく、単に手順が決まっていないことをするのが苦手なだけなのです。

しかし、この新事業がうまく軌道に乗り、きちんと仕組みを作ってしっかりオペレーションをしていく段階になると、決まったことを期日通りに着々とすすめられる人がいなければ事業は安定しません。

この段階は、堅実に計画どおり物事を進めることが得意な人が活躍するステージで、逆に意表をつくようなアイデアをどんどん出せる人の出番はなくなります。

メンバーにはそれぞれの強み、弱みがある

このように、人には「強み」「弱み」があり、それぞれに得意なこと、苦手なことは違い、その特性によって活躍できる事業のステージも違ってくるのです。

強みや弱みの診断ツールにはいろいろありますが、私たちチームビルディングコンサルタントがよく使っている「効き脳診断」は、思考特性の違いを「効き脳」として以下の4つのタイプに分類しています。

A:論理・理性脳 論理的で分析的な思考や事実を重視し、裏付けのある確かな結論を求めます。

B:堅実・計画脳 自己規制しながら、現実的な推進に向けて計画・管理・運営を行っていきます。

C:感覚・有効脳 周囲との協調を保ちながら、人間関係の構築に関わることで、チーム全体の活性化や人間的な成長を目指します。

D:冒険・創造脳 リスクを恐れず、新しい価値を生み出すことに前向き。知識や経験から物事の本質をとらえ、常に創意工夫を忘れず、新しいアイデアを楽しみます。

人によってA、B、C、Dの割合が違いがあり、数値が高いところがいわゆる「強み」低いところが「弱み」です。(厳密に言えば、「強み」には、プラス面とマイナス面がありますがここでは紹介しません)

効き脳診断サンプル

自分の思考特性にあった活動であれば、人は苦痛を感じることなく、高いモチベーションで、長時間集中できます。つまり仕事に身が入り、成果を上げやすくなります。
反対に自分の思考特性に合っていない行動は、苦手意識が生じるため、やる気も起きにくくなかなか成果は上がりません。

先ほどの会社の例であれば、ハラスメントがおきた時期は、まだまだ事業を立ち上げたばかりの時期なので、いろいろなアイデアを出してやってみたり、その結果を見て論理的に分析しながら試行錯誤することが得意なDタイプやAタイプの人に負担がかかっている状態だったのではないでしょうか。

仕事が忙しくなってくると、計画通りに堅実にすることが得意だけれど、新しいことに挑戦することが苦手なBタイプのような人たちに対して、「なぜ自分と同じように率先してできないのか?」とか「仕事量やスピードが違う」「覚えが悪い」というところばかりに意識が行き、「自分はこんなに頑張っているのにあの人たちは何もしない」という不満が溜まったと思われます。

メンバーそれぞれの個性を活かすことで、チームとしての成果が出せる

ハラスメントがおきない職場にするには、「お互いの強みと弱みの理解」を皆ができていることが必要です。「お互いの強みと弱みの理解」ができていると、自分とタイプが違うメンバーの仕事の仕方やコミュニケーションの取り方を許容できるようになるからです。

その上で、一人一人の強みをどの場面で活かすか、強みのマイナス面や弱みをどうやって補い合うかをお互いが意識し、行動することで、チームとしての成果が出るようになります。

先の会社にアドバイスするとしたらこうでしょう。

  1. 効き脳診断を用いた研修などを使って、自分とメンバーの強みや弱み、価値観の違いを知る機会を持つ
  2. この新事業をやっているのは自分たちの雇用を守るためだ、という目的を全員で常に確認する
  3. この新事業がうまくいったら、職場はどんなふうにんって、みんなどう働いていていたらいいのか? というみんなが実現したいビジョンをフルカラーの絵で皆で共有する
  4. ビジョンが実現した時に、その職場で自分がどんな風に働いているか考える

ここからはじめて、できるだけ強みを活かした役割や業務を分担をし、進捗確認のミーティングを定期的に持ちましょう。うまくいったことの共有・失敗したことや困っていることを話す場にもしながら取り組んでいったら、ハラスメントの代わりに助け合いが生まれ、新事業の成果につながっていくのではないでしょうか。

この記事のまとめ

  • パワハラの主な原因は人と人の違い、お互いの強みと弱みを理解していないこと
  • 利き脳診断は、相互理解や仕事の進め方を改善につなげる手助けになる
  • お互いの状況や進捗を確認する場を設け、積極的に相互理解を行うことが大切

小松 麻利子

小松 麻利子

特定社会保険労務士、アンガーマネジメントコンサルタント

担当地域:近畿を中心に全国

中小企業・自治体職員の働き方改革やハラスメント防止対策を中心にコンサルティングを実施。社員一人一人が強みを活かしてやりがいを持って働けるよう丁寧な支援をしています。